人生の深みと子連れへの歓迎『愛都梨絵』 仙台市青葉区の純喫茶

今回は仙台市青葉区にある純喫茶「愛都梨絵(あとりえ)」について、子連れで行った感想をまとめさせていただきます。

駐車場はある、確実に

この日は一日中、曇り。

前日に山形県天童市『虹のかかるほどの絶品味噌ラーメン』『喰らえ!窯焼きピザ!』)へ行ったので、一日中家で休んでいようと思っていた。

しかし夕方頃。私たちは再びラパンに乗りこんで走り出していた。仙台に滞在するのもあと半月ほど。次に訪れるのは少なくとも1年以上先になるだろう。この周辺には気になるお店が多すぎて、とても休んでいる時間はない

ということで以前からずっと気になっていた駅近くの喫茶店でお茶をしたのち、お洒落なのにボリューム感の凄いハンバーグ屋さんに行くことにした。

ラパンで20分くらいかけて拠点のある山を降りると、駅前の少し開けた場所に出る。その道沿いに一軒、喫茶店が何気なく佇んでいる。いつもここを通るたびに「あれは何だろう。」と気になっていたのだが、なかなか訪れる機会はなかった。というのも、何度も見ているうちにひとつ気づいたことがあったのだ。

このお店、もしかして駐車場ない…

このエリアにおいてそれはなかなかハードルが高い。駅前のコインパーキングに停めて歩かなければならないのだ。そうとなると大した距離ではないとはいえ、ふらっと思いつきで立ち寄ることはなかなかない。そんなわけでこれまで何度も仙台には来ていたものの、この喫茶店には来れずじまいだった

駅前の通り沿いにポツンと一軒。

ところがだ。出かける時に電話で確認したところ、駐車場はあるとのこと。しかし、何処なのだろう。記憶にあるお店の外観を思い返しても、まったく検討がつかなかった。それにここは交通量が結構多いところなので、通り過ぎてしまうまでの数秒間にそれを見つけて入る判断をすることは難しい。

そんなわけで結局いったん通り過ぎ、駅前のコインパーキングに停める。この通りを歩いてみたいという気持ちもあったので、散歩もかねて今日は駅前通りを見て回ろう。

こうして他にも気になるお店をチラチラと見つけながら5分ほど歩き、目的のお店のあるところまで戻った。するとよく見れば建物の右側に奥へ続く道があるではないか。

ここかー!この奥が駐車場なのか!

民家の入り口だと思ってた。

ちょっと初見では難しすぎる。むしろ反対側かと思っていた。間違えて無理矢理入っていたらちょっと大変な目に遭っていたかもしれない。こういう情報がネットにあれば良かったのだが。そう思ったので、せめてこの小さなブログに書き記しておく。

扉を開けるとそこは植物園

さてお店の前まできたが、よく見るとなかなかに味のある外観である。まるで長野の山の上にあるコテージのような雰囲気。学生の頃に軽音サークルの合宿でよく借りていた民宿を彷彿とさせ、とても懐かしい。

学生の頃の合宿を思い出すような外観。といって伝わると信じている。

ノスタルジーに浸りながら扉を開けると、そこには驚きの空間が

えっ?ここは植物園ですか?

レトロな喫茶店ではなかったのですか?

あまりにも脳内イメージと違う内観に衝撃を受ける。そこは数多くの植木やドライフラワーが埋め尽くされた空間だったのだ。それでいてレトロな雰囲気も漂っていて、まるでメルヘンと現実主義の狭間のような感覚だ。

あっけにとられていると、いらっしゃいませー。と声がした。店主は大らかそうな雰囲気のおばあちゃん。ヒナ2羽を連れた私たち夫婦をにこやかに迎えてくれた。

かわいいねぇ。と、ものすごく楽しそうに息子や娘に接してくれ、子連れに対する不快感などは微塵も感じない。この様子は純喫茶ということで少々身構えしていた私と妻の緊張を大いにほぐしてくれた。

そうして用意していただいた座席は4人掛けのテーブル席。その端にも植木鉢がいくつも置かれ、お花のすぐ近くで喫茶を楽しめるようになっている。店内の植木鉢たちは神経質にカッチリと手入れされているわけではなく、あくまで自然体な状態が精神的なリラクゼーションを生み出していた

ひとつの机がテーブルにくっついていて、帳簿のようなノートが置かれている。お客さんがいないときは店主さんがそこに座って過ごしているのだろう。このお店のもつ根源的な安心感は、垣間見える自然体にこそあるのだと確信した。

しかしそれでいて、個性的なこだわりも忘れてはいない。大量の植木鉢やドライフラワーももちろんそうなのだが、メニューもかなりユニークなものだった

まるで焦げ付いたかのようなデザイン。本革製になっていて、ひらがなでポップに書かれた文字はおそらく「焼き」で入れてある。ひとえに、まじセンスである。

と同時に、本当にうっかり焦がしちゃったんじゃない?笑 とも思える。店主さんの大らかな雰囲気が店内の空気を柔らかくしてくれるからだ。文字の配置的に明らかに意図的なデザインであることは間違いないのだが、お客さんがそう思うこともまた、お店にとってはポジティブなことなのだろう。

壁にはドライフラワー。
テーブルの上にもお花が沢山。
ドアの周りにはレトロな雰囲気が残っている。
ちゃんと飛沫防止のついたてもある。

人生の味がする珈琲

しかしこのお店の魅力は、その気楽さとセンスだけではないようだった。

ユニークなメニューに書かれた項目の中から、私はブラジルコーヒー、妻はカフェオレを注文する。

到着した飲み物のいずれからも、気品の高さを感じる。それはお店のもつ雰囲気とはまたギャップのあるものだった。

珈琲の香りは濃くて深く、苦味も強い。どちらかといえば刺激的な味といっていいのかもしれない。しかし鼻から抜ける後味には何処か懐かしいものが。知識はないが、直感的に「王様」という二文字が脳裏に浮かんだ。クセは強い、されど求心力のある。そして安心感。なるほど、それがこのお店の表現か。空間と空気、そして珈琲が線で繋がったような気がした。

ひとえに「人生の深み」というものなのかもしれない。お店全体が表現しているものは、きっと店主さんの人生で得た「イマ」。紆余曲折を経て、丸く深くなった人柄なのかもしれない。

私の珈琲もそうだが、妻のカフェオレも気品にあふれるカップで到着した。

ハードルはあれど、
いく価値あり

珈琲を飲むことによってお店への読解が深まっていった最中、店主さんが息子にケーキをサービスしてくれた

本当に子供がお好きなご様子で、ニコニコと色々話しかけてくれる。なんて素敵なお人柄なのだろう。私も同じ歳になったとき、こんな風になれるのだろうか。

息子はもらったケーキにわぁと喜びながらフォークをさして頬張る。これが人間の白紙であり、こいつも経験を経ることで丸く深くなれるのだろうか。いまのところ絶対無理と言ってやりたい。もう少し味わえ

そんなこんなで随分と難しいことに想いを馳せてしまったわけだが、結論からして子連れのハードルは精神的にはほぼ無いに等しい

ただし店内は少し狭い。なのでベビーカーはもとよりバギーもセッティングするのは無理だろう。店内のどこかに置かせてもらって、テーブル席に座ることになると思われる。

また冒頭で述べた駐車場の分かりづらさもハードルのひとつ。行く前にあらかじめこの記事で掲載した写真などを参照しておく必要はあるかもしれない。

しかし少しのハードルを超えてでも、一度このユニークかつ深みのある純喫茶には足を運んでいただけたらと思う。少なくともこのお店は、子連れで行くことを喜んでくれる店主がやっている。

この素晴らしいお店の表現に関して、全く知ったこっちゃない息子。

店舗情報

【愛都梨絵】

住所:〒989-3126 宮城県仙台市青葉区落合1-14-35

駐車スペース約2台
営業時間不定休
電話番号022-392-5930
席数ひとり掛けカウンター席が4つ、4名掛けのテーブル席がひとつ

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