今回は仙台市青葉区にある純喫茶「Elbe(エルベ)」について、子連れで行った感想をまとめさせていただきます。
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仙台市の都心は別世界
カフェ「in vitro」(『田園のアトリエ』)を後にした私たち4人。正確には2人と2羽は、またも小さなラパンを走らせ、今度は都心へと向かった。仙台市に滞在してからおよそ1ヶ月半。滅多にこちらのエリアには行かなかったのだが、この日は妻の大切な用事があったのだ。そのついでに都心で2軒ほどカフェを回ろう、という話になった。
地元の方ならばきっとわかると思うが、仙台市都心に入る瞬間はとてもとても面白い。いわゆる田舎の国道といった感じの少し暇な道が続いた先。トンネルがあり、そこを抜けると一気にビルの建ち並ぶ大都会があらわれる。
まるで国境のトンネルだ。
まじ川端さん家の康成くんが気合い入れた小説の書き出しにしたくなる感覚だ。
私が初めて仙台に来たのは今から7年前。ギタリストの友人とふたりで国道6号線をひたすら北上し、被災地で演奏をしながら仙台を目指す旅だった。
目的地に着いたのは、ひたすら田舎道を3日間レンタカーで走り続け、疲労がピークに達した頃。国境のトンネルを抜けて現れたのはまさに、空中都市だった。あの頃は東京に住んでいたのに、まるで初めて大都会にきたかのような感覚を感じざるを得なかった。
車で仙台都心にくるたび、あのときの感動が思い返される。しかもちょうど七夕祭りの日で、アーケード街はまるでクジラのヒゲのようにびっしりと上から垂れた飾りで埋め尽くされていた。あれにもまた驚かされたっけ。
ウェスティンホテルのある超高層ビルを眺めながら、そんなことを考える。後ろの席ではぴよぴよと2羽のヒナ達が人にはわからない言葉でおしゃべりをしていた。そうやって、コインパーキングに停めた車内で待つこと30分ほど。妻の用事はどうやら無事に終わったらしく、いよいよ私たちのカフェ巡り後半戦がスタートした。
謎の階段、その先に…
とりあえず休憩しよう。
そう思ってふたりで調べたところ、その場所から一番近い喫茶店は「エルベ」という名前。歩ける距離にあったので、ラパンはそのまま停めて向かうことにした。
地図を見ながら歩くこと3分ほど。
南町通りの歩道にお店の立て看板が出ていた。「喫茶 軽食 エルベ」。ここだ。間違いない。
しかし、自動ドアを開けると目の前にはガシャンと降ろされた鉄のシャッターしかないではないか。くそう、閉まっていたか。そう思って引き返そうとした時、視界の隅に何が映り込んだ。
地下飲食街
うそだろ。そこには謎の空間があり、壁にはこう書いてある看板が。そして「エルベ」という文字も。この奥にどうやら階段があるようだった。
恐る恐る覗くと、やはりそこには奥まで続く階段が。ビビる妻をたしなめ、私と娘だけでまずは降りてみることにした。
ちなみに娘は抱っこされているので、特別こいつにも勇気があったというわけでは決してない。
下に広がっていたのは、なんとも言い難い空間だった。というのも、まるでオフィス内部の間取りのようにも見えるし、ホテルのエレベーター前のようにも見える。とにかく、想像していた景色とは異なる場面であった。
そしてその一角には、たしかに喫茶店「エルベ」があった。サンプルのショーケースも置いてあり、とても入りやすくて可愛らしい外観である。
子連れもウェルカム、
ケムクナーイ
ガラス越しに外から店員さんに目を合わせ、これから4名が入ろうとしている意思を言語外で伝える。
いらっしゃいませー。
明るく呼びかけてくれるその声には、子連れ対する不愉快さは微塵も含まれていなかった。
また下調べをしていた段階で私たちにはもうひとつ懸念点があった。ここはいわゆる昔ながらの純喫茶。各テーブルには丸くてガラス製の灰皿が置かれている。
喫煙者の私個人にはいまどき飛び上がるほど嬉しい環境ではあったが、妻と小さな子供を連れているときはさすがに煙草の煙が心配になる。しかしここには天井に取り付けるタイプの非常に大きな空気清浄機があった。そのおかげで香りすらほとんど感じない。徹底した換気への姿勢とその結果に脱帽した。
ふたつの安心に満足しながら店内へ。中は思ったよりも広く、ちょうど真ん中あたりにあるテーブル席にみんなで座ることにした。
奥を見て、カウンター席もあることに気づく。まるでスナックのようで面白い雰囲気だ。家族団欒でテーブル席もいいが、一人で来た時にはそこで煙草を燻らせながら血みどろの本でも読みたい。
若めの店員さんがお水をもってきてくれたが、ここでもまた子供用の小さいストローが添えられていた。察するに普段から子連れのお客さんが少なからず来店するのであろう。
レモンスカッシュの黄色が
もはやガラス細工
私はアイスコーヒー、妻はレモンスカッシュを注文した。
フードのメニューも豊富で、塩味スパゲッティやしょうが焼きなども非常に気になるところだったが、今回は小休止ということもあり食事はやめておいた。しかしこの記事を執筆しているいまはとてもお腹が空いているので、頼まなかった自分を殴りたい。
しばらくして飲み物が到着。
私のコーヒーはザ・純喫茶のコーヒーといったどこか懐かしいものだった。
そして妻のレモンスカッシュはとても色鮮やかで可愛らしい。まるでガラス細工のような色合いで、そこに結露がかかっているのが何とも美味しそうで固唾をのまずにはいられない。ひったくって一気飲みしてやろうかという衝動を、顔面の中央に目玉がひとつしかないパリコレモデルを想像してなんとか抑え込む。
付け合わせに袋入りのドライフルーツがついてきた。こういう心遣いがきっと多くの常連さんを生み出しているのだろう。小皿に移して息子にあげると大喜びで食べ始めたので、妻はゆっくりと飲み物をいただくことができたようだ。
一方私の担当は娘。まだドライフルーツも食べられないのでひたすら興味のあるものにペタペタ触ろうとする。
こういうときの秘密兵器は人間の業と科学の英知、おせんべいだ。口いっぱいに咥えさせて黙らせ、それが無くなるまでしばしの休息をとる。
もう少し大きくなってくれればもっと楽になるのだろうが、仕方がない。いまは一瞬の判断で勝負が決まるサバイバル期。楽しんでいこう。
若い世代に
受け継がれていく純喫茶
こうして無事に小休止を終えて店外へ。仙台都心にありながら隠れ家のような雰囲気をもち、とても魅力的な喫茶店だった。地下に降りる方法が階段しかなかったことから小さな子供連れには少々ハードルが高いかもしれないが、お店のスタンスとしては子供もウェルカムな様子である。
ちなみに掲載した写真にエレベーターが映っていたと思う。あれは1階にあるシャッターの降りていたお店が開いていれば使えるのかもしれない。少なくとも私たちが訪れた日は使用することができなかった。
また換気は徹底しているとはいえ全面喫煙であったことは子供連れには難しい点だと思うが、いち喫煙者としては最近めっぽう減ってきているこのような喫茶店の情報はどんどん広めていきたいところだ。
最後に一番心に残ったこと。それは純喫茶なのに、といっては何だが店員さんがみんな若いということだ。店主とおぼしき男性が私と同じくらいか、少し年上くらいに見える。古き良き日本の喫茶店文化もまだまだ無くならないで続いていくであろうことが伺えた。
店舗情報
【喫茶軽食 エルベ】
公式HP:https://www.kissa-elbe.com/
住所:〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町1-1-30 B1F
※中国料理 馨苑(けいえん)のあるビルの地下
駐車スペース | なし |
営業時間 | 月~土、祝 11:30~17:00 日曜日定休 |
電話番号 | 022-262-1980 |
席数 | 4名掛けテーブル席が9、カウンター席6 |
この記事を書いた人
ルリニコクみみみ。三児の父。音楽家。Webマーケター。28歳のときに第一子誕生。持病のある妻と子育てをするため、コロナ禍前から在宅で働きつつ共同子育てを実施。2021年から家族とのお出かけをブログに書き始める。現在は夫婦で子育てをしながら、ルリニコクというユニットとして活動中。特技は家庭料理とおむつ替え。