今回は仙台市泉区のカフェ「in vitro (イン ヴィトロ) coffee roasters」について、子連れで行った感想をまとめさせていただきます。
Contents
田園風景にたたずむ
アトリエのようなお店
快晴。
長い梅雨が明け、東北の夏が始まった初日。
私たち家族は愛車である小さなラパンに乗って仙台市郊外の国道を走る。
しばらく仙台にいるのだし、せっかくだから東北のカフェを巡ろう。
そんな何気ない思いつきを提案したところ妻の大いなる賛同を受け、まずは近場から、ということでこの日は市内のカフェを2、3軒回ることにした。
その記念すべき1軒目といえども、特に決め方に個人的なこだわりはない。そもそも気負いをしないことこそがカフェ巡りの本質とも思っているからだ。
以前ここらで見かけた可愛らしいカフェに行ってみたいという妻の話を聞き、
じゃあそこにしようかとコンマ2秒で納得した。
助手席に座って妻とおしゃべりをしていると、あっという間に見慣れた拠点近くから遠ざかり、今回の目的地である「in vitro」に到着。
ドアを開けたとたん我先にと飛び込んできた熱気に一瞬だけ気持ちが焼きえぐられたものの、その香りがすぐに作りたての傷を埋めていく。
こうやって気づかぬうちに田舎の酸素がそっくりそのまま心を塗りかえてしまうのだろう。
改めて周りを見ると、それまでは何気なく見過ごしていた田園の美しさに気がついた。
見上げれば千葉よりも濃い気がする青空の下、太いボールペンで描いたかのような電線がフリーハンドで遥か先まで続く。右手には時間をかけて不純を丹精に取り除いた田んぼが、見たことのない緑色で尊大に広がり、その中では小さい白鷺がやけに威張りながら一羽たたずんでいる。どうやらただそこにいるだけで目立てる自分の白い身体に、相当の自信をもっているようだ。
その視線の先にはまるで西洋芸術家のアトリエのような風貌の建物。「in vitro」というネーミングの響きに右脳が納得する瞬間であった。
田園とのコントラストが巧妙な美しさを生み、そのカリスマ性を存分に高めている。建物自体のデザインはもちろんのこと、立地にも細やかなこだわりを感じる店構え。しかしその入り口に不必要な神経質さは一切ない。
おかげで私と妻は余分な遠慮をすることもなく、小さな息子ともっと小さな娘を抱えてその扉を開くことができた。
店内には大きな焙煎窯
静かに開いた扉の向こうには、本当にアトリエのような内装が広がっていた。
そのすぐ横には販売コーナーとして店主がこだわって選んだであろう珈琲豆や紅茶がお洒落にならんでいる。
お店の中央部分にある柱にはお店のオリジナルデザインであるTシャツがぶら下がり、喫茶店としてのラフさとアトリエとしてのアートな雰囲気を仲介しているようだ。
カウンターの奥はかなり広く動きやすく作られていて、創造性を欠くことなく珈琲作りができるように配慮されている。
そして驚いたのはお店の奥の方。さりげないながらも、その堂々とした出立ちから確実に目に入る位置に、大きな焙煎窯が設置してあるではないか。
この存在により、すでに「アトリエのよう」という表現の稚拙さに気付かされることとなった。ここはアトリエのような喫茶店ではない。喫茶店を兼ねた珈琲のアトリエそのものだったのである。
そのことは注文した飲み物が届いたときに、さらに明確に証明されることとなった。
珈琲に詳しくない人でも
わかりやすいメニュー
あああああああああッ!?
お洒落な雰囲気にテンションの上がる娘。放っておくとテーブルに登ったり床に落ちたりしかねない彼女を出先で鎮めるのは主に私の役目である。
視界の中でその様子を確認しつつ、お店のメニュー表にも目を通す。そこには世界各国から厳選して取り寄せたであろう銘柄がならんでいて、あまり珈琲に詳しいわけではない私の選択を大いに迷わせた。ペルーとかインドネシアの珈琲の違いとか、全然知らない。
しかし銘柄の下にはその味の特徴が誰にでもわかるようなたとえで親切に記してある。こんな知識の足りないしょうもない男にもしっかり配慮してくれる寛容なお店なのだ。
さらにそのメニューには驚くべきことに、お子様ドリンクの記載があった。このような本格的な自家製珈琲店で、子供用のメニューを作っているところを私たちはまだ知らない。これも子連れお出かけの視点としてはとても嬉しいポイントのひとつだ。
「柑橘系のフレーバーと酸。紅茶の雰囲気も。
甘みが続くクリーンなコーヒー。」
わぁ、めっちゃうまそう。
そんな無知をぶちかました直感から、私はコロンビア(ゲシャ種)のアイス、妻はカフェラテの同じくアイスをどちらも「豚のコンフィサンドプレート」とのセットにして、息子の分のミートパイと一緒に注文した。正直、カフェオレとミートパイ以外は何がくるのかよくわかっていない。
世界が変わる珈琲
はしゃぐヒナ2羽を妻とふたりで抑え込みつつ、待つこと10分ほど。
ドリンクとフードがどちらもテーブルまで到着した。早い。
まずは珈琲から一口。この種のタイプを飲んだことがある方はわかるかもしれないが、フルーティーさはその色合いにも出ている気がする。
と、先ほど珈琲に詳しくないということを暴露したうえでカッコつけても、もはや何の説得力もない。どうせ泡が黄色っぽいからそう思っただけだろう。
とにかく「爆烈に美味い」ことだけは確かだ。
実は私は25歳までお子ちゃまだったので、珈琲が飲めなかった。変化のきっかけはとある芸能事務所の社長さんに連れて行ってもらった東京緑ヶ丘の喫茶店。1,200円もするホットコーヒーだった。
値段にビビっている私に「世界が変わるから飲んでみな。」と促す社長。せい、と一口飲んだときの衝撃は忘れもしない。爽やかな苦味とゆずのようなフルーティーさが、それまでの私の価値観を見事にぶち壊してくれた。まじロック。それ以来、私は珈琲が好きになった。
その味にあまりにも似ていて、予想外の記憶の放出にしばらく黙る。まさにあの時に感じた、珈琲嫌いを珈琲好きにさせる味そのものだった。今回はアイスだったので爽やかさはさらに上といってもいいかもしれない。
正直ここまで美味しいとは思ってもみなかったので、嬉しい裏切りにお店の評価も倍々に上がっていく。
そしてお次はフード、今回は「豚のコンフィサンドプレート」に手をつける。「豚の」以外何を言っているのかよくわからない。
私は食の好みが野生的なタイプなので、肉・油・米を主に摂取して生きていきたいと思っている。なので彩りのあるサンドイッチは飲み物の一種だと思っている部分もあるわけなのだが、またしてもこの日は良い意味で裏切られることとなった。
まず入っている豚のコンフィとやらがとてもジューシーだ。
調べたところ、コンフィというのはフランスの保存調理法のひとつだそう。肉の場合は塩やハーブをまぶして油の中で低温で加熱。冷やして固まった状態のまま保存するのが本場流だそうだが、要は油でゆっくりと煮た肉料理といってしまって問題はないのかもしれない。
私は初めての経験だったのだが、普通に焼いたり、燻製したりといったものとはまったく本質的に異なる食感と味であった。
写真ではまるでベーコンのような見た目をしているものの、肉はとても柔らかいうえに油のしつこさはない。これだけでも絶品のクオリティであった。
そしてその食感をさらに魅力的にしているのが、中に入っていた揚げナスである。
コンフィをさらに柔らかく分厚く、ジューシーかつ爽やかになるようにサポートしていて、下にしいてあるレタスや周りを包むパンとの相性も抜群。まじ天才。
このひとつで何重にも効果のある、巧妙な罠。このサンドイッチにおける揚げナスはコンフィ以上に重要な役割を担う、諸葛孔明のような存在なのだ。つまり諸葛孔明はナスだったのだ。ナスが変な帽子をかぶって扇子をもっているのだ。
そうやって頭が狂っていくほど美味しい逸品だった。
息子のために頼んだミートパイもなかなかの絶品であった。
なにも無理矢理うばって食べたわけではない。子供ゆえに食事のタイミングが合わず、あまりお腹が空いていない顔をしていたので一口頂戴したまでだ。あとでおにぎりとかあげるから許してちょ、といったら快く了承した顔をしていた。
チーズは表面がカリッと香ばしく、そのすぐ下層はジューシーな状態で仕上がっていた。
ミートパイにはめずらしくパイ生地で包まれているタイプではなく、たっぷりのミートソースが薄めの生地にのっているタルトのような作り。ハーブが上からまぶしてあり、全体のバランスを考えて作られた絶品である。
これで400円なので、ケーキのような感覚でお茶会のときに頼むことができるメニューだ。
子供への配慮も抜群
さて飲み物、食べ物、雰囲気。その三拍子について最高であったことはここまでの内容からもわかってもらえたのではないかと思う。
しかし我々のようなヒナ連れの親にとって、一番大切なことはそこではない。
子供を遠慮なく連れて行けるのかどうか、連れて行って嫌な思いをしないのかどうか。
その四拍子目が最も気になるポイントなのではないだろうか。
まず扉について。大型のベビーカーだと少々つっかえてしまう可能性もあるが、バギーならば問題なく通れると思う。
そして子供用の補助イスは置いていなかったものの、「大丈夫ですか?」と一言気遣ってくれる優しさにとても安心できた。子供の分のお水に短いストローが挿してあったこともさりげなく嬉しいポイントである。そしてなによりも、お子様ドリンクの存在。これがあるだけで「子供を連れてきていい」と確信が持てる。親としての気持ちは大きく楽になることだろう。
お店の広さに対して席数が少なく、ゆったりとしたスペースがあることも子供連れにとっては非常に落ち着ける。私たちはベビーカーをもって入らなかったが、テーブルの端に置いて子供を乗せておくことができるだけの十分なスペースがあった。
洗面台には
アイリングの出来る照明
さらに特筆したい点として、トイレが非常に綺麗だったということだ。広めで、バギーならば子供を連れて入ることも可能だと思う。ひとりで子供を連れてきても安心だ。
また驚いたことに、個室のなかに全身鏡がひとつたてかけてあった。仕事前やデート中の一休みにこの喫茶店へ寄った方には嬉しいアイテムなのではないだろうか。
そして洗面台。ここが面白い。照明がリング状になっていて、目にアイリングが入るようになっていたのだ。何か経緯があっての設置なのか、開店時の遊び心なのかはわからない。しかし鏡に映る自分がさりげなく可愛く見えることによって、その先の1日がさらに楽しいものになれることは間違いない。
店舗情報
【in vitro coffee roasters】
公式HP:https://www.invitrocoffee.com/
住所:〒981-3224 宮城県仙台市泉区西田中字松下3-13
駐車スペース | 約10台 |
営業時間 | 月・木・金 10:00~18:00 水 14:00~18:00 土・日・祝 9:00~18:00 火曜日定休 |
電話番号 | 022-346-9023 |
席数 | 2~4名掛けの席が6テーブルほど |
この記事を書いた人
ルリニコクみみみ。三児の父。音楽家。Webマーケター。28歳のときに第一子誕生。持病のある妻と子育てをするため、コロナ禍前から在宅で働きつつ共同子育てを実施。2021年から家族とのお出かけをブログに書き始める。現在は夫婦で子育てをしながら、ルリニコクというユニットとして活動中。特技は家庭料理とおむつ替え。