赤ちゃんの心拍と「9週の壁」について徹底解説!

赤ちゃんが出来た!それはとってもおめでたいことです。しかし、実は妊娠がわかったからといってまだ安心は出来ません。脅かすわけではありませんが安定期に入るまでは何が起きるかわかりませんし、私の親戚でも妊娠初期で流産してしまった方もいらっしゃいます。

赤ちゃんの心拍が確認できて初めて、正式に母子手帳を受け取ることが出来ます。しかしそのタイミングはそれぞれ個人差があり、私たちの最初の子供は割と遅めだったのでとても心配しました。

そんなナイーブな時期だからこそ、あらかじめ正しい知識をもっておくことが大切です。そこで今回は赤ちゃんの心拍について、確認できる時期や正常な心拍数の目安、妊娠初期の流産のリスクについてご説明させていただこうと思います。

心拍が確認できるのは
いつから?

心拍が確認できる時期は人によって差がありますが、基本的には妊娠5週〜6週くらいの間です。

どうやって確認するの?

心拍を計測する方法として妊娠12週ごろまではプローブという器具を膣内に挿入する「経膣超音波法」が一般的です。出来るだけ赤ちゃんに近い位置から計測することによってより正確な情報を得ることができるようになるのです。

超音波による映像では子宮の中に胎嚢(たいのう)があり、中に入った豆粒くらいの赤ちゃんの心臓がトクトク動いていることが見てわかります。とても感動する瞬間ですね!

ちなみに12週を過ぎた頃からはお腹の外側から超音波を使う「経腹超音波法」に切り替わります。

赤ちゃん用心拍計やアプリで確認してもいいの?

最近は家庭用の超音波心音計や、心音を聴くためのスマートフォンアプリなどがあります。いずれも身体や赤ちゃんに害のあるものではありませんが、やはり病院の機材と比べて精度は落ちますので、そちらでうまく心拍音が聴こえなかったとしてもあまり心配しないほうがよいでしょう。ちなみに妊娠12週を過ぎたころでないとちゃんと音が拾えないようです。ママが余計な心配をしてストレスを感じる方が赤ちゃんには致命的なので、聴こえたらいいな、くらいに思っていた方がいいかと思われます。

赤ちゃんの心拍数の目安

赤ちゃんの心拍数にも目安があり、妊娠5週頃はだいたい1分間あたり90〜100回妊娠9週頃は170〜180回妊娠16週頃には150回ほどとなります。それよりも少ない場合も多い場合も注意が必要です。

目安より少ない場合は?

赤ちゃんの心拍数が目安よりも少ない状態のことを徐脈といいます。徐脈だと全身に運ぶ酸素の量が通常よりも少なくなり、この先もしかしたら酸素投与や体位変換などを行う必要があるかもしれません。

ただし検査中に赤ちゃんがストレスを感じて一時的に心拍が少なくなる場合もあります。まずは落ち着いてお医者さんの判断を仰ぎましょう。

目安より多い場合は?

逆に目安の数値よりも多い場合も注意が必要です。この状態は頻脈と呼ばれ、胸やお腹に水がたまっていたり、全身がむくんでいる可能性もあります

しかし同様に一時的な緊張などで心拍が早くなっている可能性もありますので、何度か計測をして様子を見たほうがいいでしょう。

心拍数で赤ちゃんの
性別がわかるってホント?

性別によって心拍数に差があり、1分間に150回よりも少ないと男の子、多いと女の子という噂があります。しかしこちらには科学的な根拠がなく、ただと都市伝説だと捉えたほうがいいでしょう。

性別はだいたい妊娠5ヶ月くらいになればわかりますので、この段階ではまだまだ楽しみにしておきましょう。

最初の測定では
心拍が確認できないことも多い

妊娠初期でお医者さんから教えてもらえる経過期間はそこまで正確なものではありません。最後に生理がきた時期を基準に推定されるのですが、排卵のタイミングは常々身体の状態に左右されるものですので、どうしても計算にズレが出てしまうのです。

ですから妊娠5〜6週だと思っていても実はまだその時期には達しておらず、心拍が確認できないというケースは多いです。その場合、また1、2週間ほど時間を開けて測定することとなります。

私たちも、ひとり目の子供のときは最初の測定で心拍が確認できませんでした。ふたりともひどく狼狽してパニックになっていたのを覚えています。しかし1週間後の再検査で無事に心拍は確認されました。その後も問題なくスクスクと成長しておりますので、この段階ではあまり心配し過ぎない方が身体や赤ちゃんのためにもいいかと思います。

「9週の壁」とは?

しかし心拍が確認できたからといって、まだまだ安心できるとは限りません。妊娠初期はとても不安定で、一度心臓が動いても流産してしまう可能性は少なくないのです。この章では流産の危険が高い、通称「9週の壁」について解説していきます。

心拍確認後に起こる流産

衝撃を与えたわけでもなく、出血や腹痛もないにもかかわらず、動き出した心拍が止まってしまう場合があります。これは「稽留(けいりゅう)流産」と呼ばれ、残念ながら正式に流産という診断を下されます。

こちらのケースは決して少なくなく、私の親戚もこの稽留(けいりゅう)流産を経験して大変ショックを受けていました。自覚症状がない分、精神的な衝撃は大きかったでしょう。

妊娠9週前後に行われる二回目の経膣超音波検査においてこの現象が多く確認されることから、いつしか「9週の壁」として恐れられるようになりました。

原因は?

非常に辛いことだと思いますが、自分を責めてはいけません。というのも、妊娠12週を超えない初期の流産、いわゆる早期流産の原因は、受精卵の突発的な染色体異常による細胞分裂のミス。これは行動によって防げるものではないですし、特になりやすい体質というものがあるわけでもありません。つまりは確率論。いくら注意していても起きるときは起こってしまうのです。

心拍が
復活することはあるの?

残念ながら一度止まっていると診断された心拍が再び確認されるということはほとんどありません。お医者さんも慎重に原因を探ってくれますが、日本の超音波検査は世界でも最先端に近い正確なものといわれていますので、誤審がおきる可能性は極めて低いでしょう。

早期流産の割合と、
手術について

一般的には早期流産が起きるケースは妊娠事例全体の15%ほどだといわれています。ですから決して少なくない確率で起きる現象だと理解しておくことが大切です。

早期流産が確定した場合、1〜2週間以内に入院して手術をすることになります。今後の妊娠のためにも子宮内に残された内容を取り除く必要があるのです。この手術は「掻爬(そうは)手術」といいます。処置自体は10分程度で終了するのですが、入院期間は1泊2日だったり日帰りだったりと術後の出血量や体調によって変わります。

手術のあとは約1週間後に子宮の回復具合をお医者さんが確認します。そこでまだ内容除去が足りていない場合は再手術する場合もあります。

次の妊娠ができるのは
いつから?

まず安心していただきたいのが、たとえ早期流産をしてしまったとしても、正しい術後処置をして子宮が回復すればまた妊娠はできます

流産のあと1ヶ月ほどでまた月経がおこるようになります。しかし子宮の完全回復には3ヶ月ほど必要だといわれているので、子作りはもう少し待っていた方がいいでしょう。人によって回復のスピードはさまざまですので、決して焦らずお医者さんがOKしてから次の妊娠に臨んでください。

「9週の壁」を避けるために
できること

妊娠初期の稽留(けいりゅう)流産について、原因は先天性の染色体異常などが多く完全に防げるものではないということをご説明しました。しかし、以下のような妊娠中の身体のケアによってリスクを軽減することは可能だといわれています。

健康なライフスタイルを
維持すること

妊娠中は母体の健康状態が赤ちゃんの成長に大きく影響します。栄養バランスの良い食生活や十分な睡眠、ストレスを減らすためのリラックスした時間を持つことなど、健康的なライフスタイルを維持することで胎児の健康を保つことができます。

禁煙、禁酒、薬物の使用を
避けること

タバコやアルコール、薬物の使用は、胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。妊娠中は、これらの使用を避けることが非常に重要です。

定期的な診断を受けること

定期的な妊婦検診を受けることで、母体や胎児の健康状態を確認することができます。病院によって決められた検診は必ず受けるようにしましょう。特に妊娠初期には、定期的な健康診断やカウンセリングを受けることで赤ちゃんの身体への負担等を早期に発見することができるでしょう。

睡眠不足を避けること

妊娠中の睡眠不足は母体や胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。睡眠時間を確保するため、就寝前にリラックスする時間を持つ・就寝時間を早める・寝具を快適なものにするなどの工夫が必要です。

ストレスを減らすこと

妊娠中のストレスも胎児に影響を及ぼす可能性があります。ストレスを減らすために、マタニティヨガやマッサージなどのリラックスする活動を取り入れる・心身ともにリラックスできる場所を作る・ストレスの原因を特定し解消するなどの方法が効果的です。

参考:『妊娠と出産の実際Q&A』(著者: 日本産婦人科医会, 出版社: メディカルレビュー社)
『妊娠・出産・育児完全マニュアル』(著者: 東海林さだお, 出版社: 家の光協会)
『妊娠の基礎知識』(著者: 大田一郎, 出版社: 医学書院)

高齢出産と
「9週の壁」のリスク

高齢出産においては、やはり稽留(けいりゅう)流産の危険性が高まるとされています。厚生労働省によると、35歳以上の妊娠初期の流産率は、25歳未満の妊娠初期の流産率の約2倍になると報告されており、稽留流産の発生率も高齢出産者の方が高くなります。

ただし、高齢出産だと必ずしも稽留流産が起こるというわけではありません。さきほどご説明したように適切な妊娠管理や健康管理をすることで、リスクを低減することができます。妊娠初期には、定期的な健康診断や妊婦健診を受け、適切な対処を行うことが重要です。

参考:厚生労働省「母体の年齢階級による出生児の周産期死亡率」(2019年)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/21-1.html

日本産科婦人科学会「高齢妊娠に伴う母体・胎児リスクの評価と管理に関するガイドライン(2013年改訂版)」
https://www.jsog.or.jp/uploads/files/guideline/2013/12_jsog_guideline_high-age_pregnancy.pdf

日本妊娠高血圧症候群学会「高齢妊娠における妊娠高血圧症候群の特徴と管理」
https://www.jshp.jp/jp/guideline/pdf/20190424_h17.pdf

「9週の壁」を超えた後の
流産のリスクについて

妊娠9週目に心拍確認ができた場合、流産の確率は約2%未満で、妊娠10週目になると約1%未満になります。一方で妊娠12週目に達すると、流産のリスクは約0.5%未満にまで下がります

このように流産のリスクは低下しますが、それでもやはりゼロにはなりません。以降の流産の原因としては、胎盤の問題や子宮頸管の異常、母体の疾患などが挙げられるでしょう。しかし9週目以降の流産は比較的稀であり、やはり妊娠初期の流産のほうが多いです。

また年齢や妊娠歴、母体の健康状態などによって流産のリスクは異なります。高齢出産や妊娠歴のある方、子宮筋腫や子宮内膜症などの疾患を抱える方は、9週目以降も流産のリスクが高い場合があります。また、妊娠中の飲酒や喫煙、ストレスの多い生活なども流産のリスクを高めることが知られています。

結論として妊娠9週目以降に心拍が確認できた場合でも、安心せずにちゃんと決められた妊婦検診を受け、適切なケアを心がけることが大切なのです

参考:日本産科婦人科学会「妊娠初期の流産診療ガイドライン」(2020年)
https://www.jsog.or.jp/uploads/figo2018/10_miscarriage.pdf

日本妊娠高血圧症候群学会「妊娠高血圧症候群に関する診療ガイドライン2021」(2021年)
https://www.jshp.jp/guideline/hypertension_guideline2021.pdf

日本産科婦人科学会「妊娠後期における母体・胎児リスクアセスメントの適用に関する指針」(2016年) 
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20160510_06.pdf

まとめ

今回はお腹の赤ちゃんの心拍について、確認できる時期やその速さの目安、確認できない場合の理由などについてご説明させていただきました。

赤ちゃんの心拍が確認できるのは妊娠してからだいたい5〜6週ほど経ったころからで、その測定方法は「経膣超音波法」が一般的です。市販の心音測定器やアプリなどでも心拍音を聞くことは可能ですが、妊娠初期だと正しく動作しないことも多いでしょう。

心拍数の目安について、妊娠5週頃はだいたい1分間あたり90〜100回、妊娠9週頃は170〜180回、妊娠16週頃には150回ほど。これよりも少ない場合も多い場合も注意が必要ですが、慌てずにお医者さんの判断に従いましょう。

一度確認された心拍が止まってしまう「稽留(けいりゅう)流産」という現象が妊娠事例全体の15%という少なくない確率で発生します。原因は突発的な染色体異常によるものなので行動のせいでも体質のせいでもありません。早期流産が確定したら1〜2週間以内に手術をおこないます。

流産をしてしまっても、正しい術後の対応ができれば子宮は完全に回復し、問題なく次の妊娠をすることが可能です。お医者さんの判断によりますが、だいたい月経が再開してから3ヶ月ほど経てば子作りをしても安全だといわれています。

また稽留(けいりゅう)流産は妊娠中の体調・生活管理によってある程度リスクを軽減することが可能です。高齢出産の場合はリスクが高まるとされていますので、決められた検診には参加し、生活管理を心がけましょう。

妊娠9週を過ぎた頃から流産の確率は急減し、だいたい10週前後には約0.5%未満まで下がると言われています。しかしながら油断はせず、出産の瞬間までは自分の身体をいたわっていきましょう。

本記事の内容が赤ちゃんのことで悩むすべてのママ、パパのご参考になれれば幸いです。
ではまた。


妊娠中に役立つ情報としてこちらの記事も是非合わせてご参照ください!


筆者夫婦が子連れでお出かけをするブログ記事へはこちらから!

    コンタクト