味も子連れへの気遣いも◎「たかたのごはん」 岩手県陸前高田市の海鮮料理店

今回は岩手県陸前高田市にある海鮮丼のお店「たかたのごはん」について、子連れで行った感想をまとめさせていただきます。

陸前高田市についての他の記事は『そこに見えるは未来の街』『牡蠣を喰らいまくれ』をご参照ください。

再びの岩手へ

この日は曇り。前回の平泉訪問(『ベビーカーを忘れてはいけない!』『岩手が大好きになる味』)から1週間ほど経った頃。私たちのラパンは再び仙台から東北自動車道を北上して岩手県に突入していた

今回は奥州市の方で妻の用事があったので午前中から出発し、午後はまた岩手を観光しようということになったのだ。

そこで私が今回提案したのは陸前高田市。以前からずっと一度訪れたかった街で、本当は平泉に来たときも帰りに寄れたらいいなと考えていた。しかし案外内陸部から三陸までは距離があり、ほぼ仙台と平泉と同じくらいの時間がかかるということで泣く泣く断念したのだった。

しかし今回はしっかりと計画を立てた。お昼くらいに奥州について用事が済めば、だいたいそこから1時間半ほど。14時くらいには陸前高田に到着できるはずだ。その時間であればギリギリ海鮮丼などの飲食店にも間に合うだろうし、その後でゆっくりと街を見て回れるだろう。

こうして我々一同は勢いよくラパンに乗り込んだ。しかも今回はメンバーがひとり多い。妻の妹も一緒なのだ。少し子供を見ていてもらえるし、運転を替わってもらえるので非常に助かる。働いてくれる分、今日は俺のおごりで贅沢なお食事を堪能させてやろうじゃないか。

そんなわけでこの日は平泉を通り過ぎ、もう30分ほど走って奥州で高速を降りた。そこから第一の目的地へとさらに30分ほど走り、妻と義妹が用事を済ます。私はヒナ2羽と一緒にYouTubeを見ながらラパンの中で待つ。しばらくするとふたりが帰ってきて、この日の観光旅が始まった。

くねくねと曲がる山道を義妹が運転する。感覚的すぎて言葉ではうまく説明ができないが、岩手の景色にはやはり他の何処とも異なる魅力があふれている。どことなく「若さ」を感じるのだ。新緑の色が多いからのような気もするが、それだけではないのかもしれない。私と妻はハイテンションで、車用のBluetoothスピーカー流れる音楽を聴きながら360度広がる大自然の表情を眺めていた。

ジェットコースターのような道路が山を貫く。

道の駅 高田松原へ

しばらくすると山道から抜け、数々の集落が点在するエリアに辿り着いた。Googleナビによると、ここから海岸まではおよそ30分。まだまだ周囲には山の風景が続いているが、平野を挟まず山間部からいきなり海に出るという距離感は三陸地域の特徴なのかもしれない。

と、そこで我々の空腹感が限界に達し始めた。ヒナたちはもうご飯を済ませてあるので2羽ともスヤスヤ眠っていたのだが、大人たちは瀕死だ。ついにはコンビニで軽く食べようなどという愚かなアイディアまで浮かんでくる始末だったので、「着いたら最高の海鮮があるから!」という強い一言で自分も含めて過ちがおこらないようにたしなめる。ここでお腹を満たしてしまうのはあまりにももったいないはずだ。ちなみに調べてある、と安心させていたが実際はまだ調べていなかったのでこの時点ではお店がまだやっているという保証はなかった。

これぞ、命懸けのライアーゲームである。

そんな議論をしてからすぐ、陸前高田の市街地に到着した。ほら、我慢してよかっただろう。とは言うものの、まだ海鮮のお店がやっているかどうかはわからない。あれから一応Googleで検索はしていたものの、短縮営業や臨時休業の情報はここに反映されていないことがほとんどなのであまり当てにはならないだろう。「道の駅 高田松原」の中に海鮮丼のお店があるというので、まずはここを目指すことにした。

ふと気づくと、周りの光景にだんだんと違和感を感じるようになった。プレハブ造りの建物がかなり多くなり、わずかに存在する木造やコンクリートのお店や家は明らかにここ数年で建てられたもの。つまり、かつて津波によって壊滅したエリアまで到着したということである。ほんの小さな新しい市街地を抜けると、もうそこには広大な土地だけが広がっていた。実は今年、陸前高田市は10メートル以上の超大規模な地盤かさ上げ工事を終えたばかりで、まだ街の多くが仮設状態のままだったのである。これからいよいよ、このかさ上げした大地に再び街が再建されていくタイミングなのだ。ちなみにこのかさ上げ工事は歴史的にも類を見ないほどの大掛かりなもので、土を運ぶための巨大なベルトコンベアーまでが設置してあったという。しかし私たちが訪れる数ヶ月前に撤去したらしく、その姿はすでにもうなかった。

なお、震災の遺構や街全体についての感想は次回の記事(『そこに見えるは未来の街』)にてまとめさせていただくことにする。今回はとにかく「たかたのごはん」だ。

大規模なかさ上げ工事を終えたかつての中心街。

道の駅 高田松原」の広大な駐車場には数多くの車が停まっていた。それはここがいかに著名な土地であるかを物語っているようだった。その数少ない空席にラパンを駐車する。さあ、いよいよ海鮮丼だ

建物の中に入ると、そこはかなり広めの地産品販売スペースとなっていた。その向かって右側にはまるで個室のように囲いで覆われたテーブル席がいくつも並び、海鮮料理と思われるお店がふたつ。どうやら奥にあるのが目的の「たかたのごはん」のようだ。

ところが入り口に近い方のお店はもうすでに注文を締めて営業を終えようとしている。まるで飛行機が乱気流で大きく揺れたときのように、全身の毛穴が開くのがわかった

急いで奥まで行き、「たかたのごはん」の食券機がまだ締められていないことを確認する。よかった、こっちはまだやっているようだ。お店の方に何時までやっているのかを尋ねたところ、目の前にあるお店が閉まったら終わろうかな、とのこと。どうやら明確に何時まで、と決まっているわけではないようだ。もう既に手前のお店は注文をストップしていたので、本当はもう終わるつもりだったのかもしれない

食券機。どれもめちゃくちゃ美味しそうだ。

さあ選ぼうと財布を取り出したところで、重大なミスに気づいた。『第9話 ベビーカーを忘れてはいけない!』にも書いたことだが、基本的に我が家は現金を持ち歩かない。そう、お金をおろすのを忘れていたのである。

とんだ凡ミスだ。ダッシュでインフォメーションまで行き、スタッフの方にATMはないかと訊ねる。しかし、答えはNO。それどころか近くのコンビニまでは片道20分ほどかかるというではないか。

仕方なく妻の妹と長男をお店の前に残し、私と妻と娘でラパンに乗り込みコンビニへダッシュ。ちなみに信用できる身内だからいいが、本当は短時間だったとしてもこういうことはしてはいけない。何が起きてもこちらの責任である

ATMで無事にお金をおろして道の駅に戻る途中、義妹から電話が。もうすぐ閉まりそうだよ、とのこと。やばい。速攻で戻ると伝えてスマホをしまう。どうやらお店の人にもうちょっとだけ待ってくれるように取り計らってくれていたのだ。妻の妹、なんて良い奴だ

急いで戻ると、まるで3年ぶりに孫に会う田舎のおばあちゃんのようなテンションで義妹が手を振っていた。どうやら本当にギリギリのギリギリだったようだ。

食券機にお金を入れてだいたい0.5秒ほどの俊速でボタンを押す。今回は大人3人とも「たかた丼」というメニューを選択した。遅くなって大変申し訳ありません、と謝りながら食券を渡すと、お店の方はニコニコとそれを快く受け取ってくれた

駐車場には沢山の車が停まっていた。
シンプルながらスタイリッシュな道の駅。
道の駅の前にはマップの描かれた看板が。食事の後は震災祈念館と奇跡の一本松を見学にいく。
地産品コーナーのとなりに、囲いで分けられたテーブル席が並んでいる。
物憂げな様子で私と妻を待つ息子。義妹が撮影。

お店の方の気遣いに感動

食券と引き換えに呼び出しブザーをいただき、座席へ。先ほども書いたがそれぞれのテーブルについたてが施されており、まるで個室のようで落ち着ける雰囲気だ。ふと天井を見上げると、まるで美術館のように綺麗でカッコいいデザインになっていた。こんなフードコートは見たことがない。

道の駅なので当然ガヤガヤとしていて、子供の急な叫び声などに神経を使う必要もない。いつものようにテーブルを消毒し、リラックスしながらわくわくと待つ。

しばらくするとブザーが震えた。子供たちは妻に任せ、私と義妹が取りに行く。お店のカウンターに用意されていたのは、圧倒的な輝きを放つ美味しそうな海鮮丼だった。しかもお新香とお味噌汁までついているではないか。一気にテンションが倍増していく。

フードコートなどで食事を自分で取りにいかねばならない場合、いつもなら私が妻のご飯も一緒に持って席まで行く。しかし今回はお味噌汁がついていたのでちょっと難しそうだった。もうひとつは一度テーブルに戻ってから取りに行くしかないだろう。そう思ってひとつだけ持って行こうとすると…。

なんと、お店の方が席まで持ってきてくれたのだ!

これには感動した。私たちを待ってくれていただけではなく、わざわざ気を遣ってお食事を運んでくれるだなんて。道の駅のフードコートでこんなことをしてもらえるだなんて想像もしていなかった。少なくとも他の街ではこんなことは経験がない。

まるで美術館のように高くてお洒落な天井。
何故か椅子が足りていなかったので他から拝借した。

イクラが分厚く載っていた

感動はその心遣いだけにとどまらなかった。席について近くでよく見てみると、この「たかた丼」に載っているイクラはかなり粒が大きいではないか。牡蠣もツヤツヤとしていて、美しい。めかぶも新緑色。陸前高田の名物の実力は凄まじいものがあった。ブログのための写真を撮る時間も惜しいくらいのご馳走である。取り急ぎ撮影を終え、すぐにイクラを一口ほおばった。

美味ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♡

そして甘ぁぁぁぁぁぁぁ♡

こんなに美味しいイクラは初めてかもしれない。三陸のイクラってこんなに濃厚で美味しかったのか。あまりイメージがなかったので本当に驚いた。後に調べたところ、三陸では銀鮭の養殖をしていて大粒のイクラが作れるそうだが、その生産量は全国に流通できるほど多いとはいえず結構貴重なのだという。

そんなレアなごちそうがご飯の上にたっぷりと載っている。そのへんの海鮮丼のように薄く敷き詰めてあるのではない。1.5㎝ほどの層になってしっかりと積み重なっているのだ。あまりにも贅沢。これで1800円だというのだからお値打ちにも程があるだろう。イクラの丼でイクラよりも先にご飯がなくなりそうなほどの太っ腹な量だ。

さらに陸前高田・広田湾の名物である牡蠣。こちらもとてつもない美味しさだった。ここに載っている牡蠣は小ぶりながらもプリプリでミルキー。中から滲み出るエキスはまるでジュースのようである。これだけでも感動するほどの美味しさだったが、実はこれはほんの片鱗に過ぎなかった。この夜にカキ小屋『牡蠣を喰らいまくれ』)へ行くことになるのだが、そこで陸前高田の本気の牡蠣たちを見せつけられることとなる。

めかぶもトロトロでコリコリ。スーパーで売っているようなほとんど出汁味の飲み物のようなそれとは異なり、しっかりとした食感と風味がある。三陸の食材のポテンシャルは本当に凄かった。

そして一番予想外だったのは、ついてきたお味噌汁。一口すすると衝撃が全身を駆け巡った。なんだこの美味しさは!広田湾の海藻が入っているのはわかるが、もはや出汁も味噌も特別なものを使っているとしか思えない味。ついてきた、だなんてとんでもない。これだけでも食べる価値のある逸品だった。

大粒のイクラはまるでガラス細工のよう。
たまらん。プチプチ。たまらん。
ついてきたお味噌汁にも広田湾の海藻が。

子連れでも最大限楽しめる

フードコートだから子供が騒いでも気にならないし、座席も広いし、お店の方はとてつもなく優しい天井はお洒落で、ご飯はとてつもない大ごちそう。しかもこの内容にしてはとてもお得なお値段。今回は済ませていたので注文はしなかったが、小さな子供でも食べられる海鮮以外のメニューもある。どれをとっても子連れにとって言うことなしの素晴らしい飲食店だった。

お店の方のご対応からもお料理からも、そして道の駅全体の作り込みからも「おもてなし」の心をはっきりと感じた。遠方からはるばる遊びに来たお客さんに対して、「本当に来てよかった。」と思わせるだけのクオリティと心遣いがここにはある

この時点で陸前高田に対するリスペクトと愛着は高まりつつあったのだが、このあとの観光と散策、夕食にてさらにその真髄をさらに目の当たりにすることとなった。この街がいかに素敵で誰もが見習うべき街なのか、これからも広く伝えていけたらと思う。

次回は震災の伝承館と遺構を見学し、再建された中心街を散策する。

『そこに見えるは未来の街』に続く。

子供がはしゃいでもそこまで神経を使わないで済む。
広いし個室仕様なので気が楽だ。

店舗情報

公式HP:https://takata-matsubara.com/

住所:〒029-2204 岩手県陸前高田市気仙町字土手影180 道の駅 高田松原

駐車スペース広大
営業時間10:30~15:30
※現在、コロナウイルス対応のため短縮営業中
10:30〜14:30
メニューは全てテイクアウトとなっており、店内では飲食不可
外のテーブルを使用することは可能
日曜営業
定休日 無休
電話番号0192-22-8411
席数64席

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